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第十九話
その⑨白氏に同じ【前篇】
三月八日には、迎えの者が加賀へと出発しました。おそくとも、四月の末には、渤海使が都に着くというので、歓迎の用意は、一段と忙しくなりました。
渤海使を迎えるにつけて、一番問題になるのは、接待役を誰に命ずるかということです。と申しますのは、唐からでも、渤海からでも、大陸から来る使者をもてなすのには、詩や文を作って
互いに取りかわさねばなりません。そのためには、詩文の上手な人を接待役にしなければなりません。
もし、あまりうまくなかったら、日本の恥になるというので、誰を接待役にするかは、いつも人々の眼をみはって待つところだったからです。
この大切な接待役には、こんどは誰がなるのだろうと、都では、よるとさわると、この話でもちきりでした。が、四月二十一日になって、その名が発表されました。
菅原道眞と、島田忠臣との二人です。
道眞はその時、
治部大輔というのは、治部省という役所の、今でいえば次官です。ではなぜ、この役に任ぜられたかといえば、それはほかでもない、治部省というのが、一部、外国との交際のことをつかさどる役所だったからです。
数多い学者の中から選び出されて、この名誉ある大役を仰せつけられたことに、道眞はすっかり感激しました。
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