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第二十話
その⑨白氏に同じ【後篇】
4月28日、渤海からの使者、むづかしくいえば
一行は、七条朱雀なる
道眞らは、使者の
「この島国の日本人に、どれだけの詩が作れよう。」
と、内心ばかにしていましたが、道眞の詩を見ると、どうしてどうして、ばかにしたどころか、ひょっとすると、唐にも、このくらいの詩人は沢山はいまい、と考え始めました。詩のやりとりを重ねる毎に、だんだん強くそう思いだしました。とうとう大使らは、感心してしまって、
「菅原氏の詩は、白楽天にも負けない。」
といってほめたたえました。
白楽天というのは、唐の大詩人で、白楽天といえば、およそ詩を作る人なら誰一人知らぬ者はなく、この人の詩集を愛読し、この人に見習ったものです。ですから、「白楽天に同じ」というのは、詩の神様と同じだということで、これに増すほめ言葉は、ほかにありません。
こうほめられて道眞も、満足だったに違いありません。このことを伝え聞いて、世の人々は今更ながら道眞の文才に驚き、一層尊敬の心を強くしました。
しかし一方では、こんな話をする者もありました。
「君、渤海大使に見せたという道眞の詩をどう思う。」
「何だ、あのつたなさといったら、まるでお話にならぬじゃないか。」
「そうだよ、あんなつたない詩は見たことがない。あれが渤海の大使にほめられたというから。不思議でならないんだよ。」
「あんな詩がほめられるわけがない。あれはきっと、道眞がそういって、自分でふれまわるんだ。僕はそう思うよ。」
またもや悪口です。
道眞をねたんで、これを傷つけ、その地位を奪おうとするものは、一層ひどく悪くいいました。
そんな噂は、道眞の耳にも入りました。
「去年藤原冬緒をそしった詩の時は、自分だと疑われた。それはこんなうまい詩は、道眞でなければ書けぬからとのことだった。ところが、今年の
道眞は眉をひそめて、こう考えるのでした。
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