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第二十九話
その⑬歴史家道眞【中篇】
誰しも先ず気にかかるのは、このことですが、聞いてみれば、第一番に神様に関することを集めた所があります。
日本は神国です。何よりもさきに神様に関することを集めた部分を、神祇部の第一・第二という部分は、『日本書紀』の神代のことを記してあるのと同じことで、少しも分類してありません。『
それを小さく分類などしたら、何のことやら、少しもわからなくなります。それでは、日本にとって大切な神代の物語が、死んでしまうのも同じ事です。
いくら『類聚国史』であっても、神話だけは分類出来ない。ーーー道眞はこう考えて。神話だけは、『日本書紀』にあるとおり、そのままに記しておいたのでした。
神祇部につづいて、帝王部というのがあります。神様の次には仏様のことが出そうなのに、仏様のことはずっと後のほうにまわして、神祇部の次には、天皇に関し奉ることを集めた部分をもってきたのでした。
日本の国体から考えて、神祇部・帝王部がまっさきにこなければならぬことは、申すまでもございません。道眞はさすがに、このことを、はっきりわきまえていたのです。
『類聚国史』を詳しく見てゆけば、道眞の偉いことのわかるところがまだいくつもありますが、一つの記事をどの武に入れるかということだけでも、容易なことではありませんし、また何という部を立てようかということでも、よほど工夫をこらさねばなりません。
こんなことを考えてみても、とこの書物を作るには、並大抵の苦労でなかったことがわかりますし、しかもそれを見事に果たして人々を感心させたのですから、道眞は、偉い歴史家だったと申さねばなりません。
『類聚国史』が出来たのは、今から約千年も前のことです。千年の間には、虫にくわれたり火事に焼けたりして、始め二百巻もあった『類聚国史』は、今では、わずかに六十二巻しか残っていません。
それでもこの書物は、いまなお歴史家にとって大切なものとされていますし、明治の御代に、『古事類苑』という便利のよい書物が作られましたが、それは実に、この『類聚国史』を見ならって作られたのであります。
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