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第二十六話
その⑫春立ちかえる【前篇】
どうしたことか基経は、その年は病気つづきで、すっかり元気がありません。年の暮には、到底だめというので、関白をやめましたが、あくる寛平三年の正月には、とうとうなくなってしまいました。
基経には、
藤原
左大臣に
天皇の御側近くには、厄介者もないが、頼りになる人もありません。この時、天皇はお考えになりました。
「この平安京に都がうつされてから、今日まで、かれこれ百年になる。この百年の間をふり返ってみると、どうもその始め頃の
才のあるもの、学問のある者は、どしどし高い官に進められた。そこで、人々は学問にはげむし、すぐれた人物が政治をするのだから、国内はよく治まった。国民は上の者も下の者も、よろこびにあふれ、活気に満ちていた。
ところが、どうだろう。この頃は、国民にはつらつとした気分がないようだ。頭がよくても学問があってもだめだ。藤原氏だけが威張っていて、ほかの氏の者には、頭をあげさせない。どんな立派な人物であっても、その人が藤原氏でなければ、高い官職にのぼれないというのでは、気がくさってしまう。学問も才もない、ただ家柄だけがよい、というような役人では、よい政治の行われるはずがない。
これではいけない。このままでは、我が国の発展は望めぬ。誰か立派な人物を用いて、政治をたすけさせよう。そうすれば、世の中の者達も、藤原氏でなくても出世は出来ると知って、気分が朗らかになるろう。立派な人物が次々と出てくれば、政治はよく行われ、国の勢いは盛んになる・・・・・。」
こうお考えになって、すぐさま天皇の御心に浮かんだのは、道眞の名でした。
道眞はこの頃稀な大学者であり、正しいと思ったことは、どこまでも曲げぬしっかりした人物だとご存知だったからです。
基経がなくなって、一月あまりたった2月29日のことです。道眞を
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