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第四十七話
その21 流れゆく身【後編】
さすがに、番兵の中にも、法皇様をこの真冬、御門の外へお待たせ申すのは、あまりにももったいないことだと思うものもありましたが、しかし、御門をお通し申してはならぬという命令によって、どうすることもできませんでした。
番兵たちが、もじもじしているところに、やってきたのは
法皇の御姿を拝しましたが
「御門をあけてはならぬぞ。」
日は、間もなく西の山の
御門を守る者どもは、相変わらず厳重に門を警めています。(いましめています・・・警戒する)
法皇も、今はこれまでと、とうとうお立ちになって、重々しい御足どりで、内裏から離れて行かれました。
いよいよ、筑紫への出発の日がまいりました。
勅使
太宰権師に任ずるとはいいますが、それはやはり罪人扱いです。輿の粗末なことでも、そのことはよくわかります。
紅梅殿には、菅公と幼いお子達四人とがいました。奥方は、二三日前からよそに移っておられ、今は自分と一緒に筑紫に下ることになっている、お子達がおられるだけです。
出発の時刻が迫りました。眞興はとげとげしい声で
「用意はよいか。」
と、居丈高(いたけだか・・・人を威圧するような態度をとるさま)にどなりました。
菅公には、永年済みなれた紅梅殿です。
今が最後と思えば、庭の竹にも、
その時です。菅公はふと足を
それは一首の和歌でした。
東風吹かば 匂いおこせよ 梅の花
あるじなしとて 春な忘れそ
それから一時間ばかりした頃、菅公を乗せた輿は、もはや平安京の町はずれを、西に向かって進んでいました。
つづく
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