三浦半島唯一学問の神 久里浜天神社
三浦半島唯一学問の神 久里浜天神社
  • 天神様菅原道真公のお話
  • 初宮詣
  • 七五三
  • 合格祈願
  • 病気平癒
  • 厄払い・方険八方除け
  • 安産
  • 交通安全
  • 出張祭典
  • ご祈祷仮予約こちらから
ホーム  >  天神様菅原道真公のお話  >  その⑱右大臣に昇る【前篇】
天神様菅原道真公のお話
第四〇話
その⑱右大臣に昇る【前篇】


太政大臣藤原基経(だじょうだいじんふじわらもとつね)のなくなったのは、寛平三年(891)のことでありました。この時の左大臣は源融(みなもとのとおる)、右大臣は藤原 良世(よしよ) でした。

二人の中のどちらかが、基経のなくなったあとをついで、太政大臣になるかと思いましたが、どちらも任ぜられません。もちろん、ほかの人はなりませんでした。

そこで、基経がなくなると、左大臣の 源融(みなもとのとおる) が、一番上ということになりました。

ところが、その (とおる) は、寛平七年になくなりましたから、右大臣の良世が左大臣に進み、右大臣には源 能有(よしあり) もなくなってしまい、結局醍醐天皇の御即位遊ばされた時は、大臣は一人もなく、 大納言(だいなごん) 藤原時平(ときひら) が一番上で、次の権大納言に源 (ひかる) と菅原道眞の二人がいました。

しかし、源光というのは、家柄がよいから、これまで進んだというだけの人でしたから、主に醍醐天皇をお助け申し上げるのは、実は時平と道眞とのただの二人だけでした。

そんなわけでしたから、昌泰二年(899)になると、この二人が並んで大臣に進み、時平が左大臣に、道眞が右大臣に任ぜられました。

公卿になったのでさえ、珍しいことだと驚いたのに、今や道眞は、右大臣という高い官にまでも、昇ることになりました。

太政大臣・左大臣・右大臣を三公と申しました。道眞のことを菅原道眞公、または 菅公(かんこう) といいますのは、この人が三公と数えられる右大臣であったからです。今まで、道眞道眞と呼び捨てにしてきました私も、これからは、公の字をつけて呼ぶことにしましょう。

参議になった時でさえ、世間の嵐は菅公にひどくあたりました。それが、更に伸びて、今は右大臣という高い木になったのですから、風当たりは一層強くなりました。

世間の人達は、大臣になるのは、藤原氏とか、源氏とか、家柄のよい家に生まれた者だけだと考えています。そこで菅公が右大臣になったということを聞いて、ただもう驚くばかりでした。

「学者のくせに、右大臣にしていただくなんて生意気だ。」

というかと思うと、

「一体、学者の家に生まれた者で、大臣にまでも昇った者があるかしら。」

「いや、無いことはない。今から百二十年ばかりも前に、 吉備真備公(きびのまきびこう) が、ただ一人だけある。」

「そうかね、でも吉備公はお偉かったからね。とても道眞などの、及ぶお方でないよ。」

と言い合う者もあります。

吉備公と菅公のどちらが偉いか、本当に菅公は吉備公に及ばないのか、そんなことはよくは知らなくても、菅公を何とかして悪くいわねば、気がすまないのです。

ただ陰口をきくぐらいは、仕方がありませんが、菅公の身近に、まだまだ、ひどく悪く思うものが沢山いました。

まず、源(ひかる) があります。光にしてみれば、自分は道眞などとは比較にならぬよい家柄の生まれなのに、道眞の下にすわらねばならぬとは、こんないまいましいことはない、と思いました。

それも、初めから菅公が上で、光は後からついてゆくというのならまだしも、菅公が参議になった時、ーーー初めて公卿の仲間入りをした時は、光はすでに中納言で、公卿では上から四番目、菅公など遥か下に見下ろしていたのに、五、六年のうちに追い越されてしまったというのですから、光にしてみればたまりません。

大納言 藤原高藤(ふじわらたかふじ) もそうでした。この人は今を時めく藤原氏の別れである上に、醍醐天皇の外戚に自分が当たるというというわけですが、その高藤が菅公に勝てないというのですから、この人もくやしくてなりませんでした。

光や高藤のように、菅公の下にすわるわけではなかったが、菅公のことが気になってたまらないのは時平でした。



続きを読む


菅原道眞公のお話 目次
第一話 其の①男子生まれる【前編】(10/2) 第二話 其の①男子生まれる【後編】(10/3)
第三話 其の②学者の家【前編】(10/4) 第四話 其の②学者の家【中編】(10/5)
第五話 其の②学者の家【後編】(10/6) 第六話 其の③双葉芳し【前編】(10/7)
第七話 其の③双葉芳し【後編】(10/9) 第八話 其の④月の桂【前編】(10/11)
第九話 其の④月の桂【後編】(10/13) 第十話 其の⑤文武を磨く【前編】(10/15)
第十一話 其の⑤文武を磨く【後編】(10/17) 第十二話 其の⑥官途につく【前編】(10/21)
第十三話 其の⑥官途につく【中編】(10/24) 第十四話 其の⑥官途につく【後篇】(10/28)
第十五話 其の⑦母をうしなう【前編】(10/30) 第十六話 其の⑦母をうしなう【後篇】(11/1)
第十七話 其の⑧文章博士【前編】(11/3) 第十八話 其の⑧文章博士【後篇】(11/6)
第十九話 其の⑨白氏に同じ【前篇】(11/8) 第二十話 其の⑨白氏に同じ【後篇】(11/10)
第二十一話 其の⑩讃岐に赴く【前編】(11/12) 第二十二話 其の⑩讃岐に赴く【後篇】(11/15)
第二十三話 其の⑪阿衡の儀【前編】(11/17) 第二十四話 其の⑪阿衡の儀【中編】(11/19)
第二十五話 其の⑪阿衡の儀【後編】(11/21) 第二十六話 其の⑫春立ちかえる【前編】(11/23)
第二十七話 其の⑫春立ちかえる【後篇】(11/25) 第二十八話 其の⑬歴史家道眞【前編】(11/27)
第二十九話 其の⑬歴史家道眞【中編】(11/30) 第三十話  其の⑬歴史家道眞【後編】(12/2)
第三十一話 其の⑭遣唐使を停む【前編】(12/4) 第三十二話 其の⑭遣唐使を停む【中編】(12/7)
第三十三話 其の⑭遣唐使を停む【後編】(12/13) 第三十四話 其の⑮知命の賀【前編】(12/15)
第三十五話 其の⑮知命の賀【後編】(12/18) 第三十六話 其の⑯天皇の師伝【前編】(12/21)
第三十七話 其の⑯天皇の師伝【後編】(12/26) 第三十八話 其の⑰大和への旅路【前編】(H.17/1/24)
第三十九話 其の⑰大和への旅路【後編】(1/24) 第四十話 其の⑱右大臣に昇る【前編】(1/29)
第四十一話其の⑱右大臣に昇る【後編】(2/9) 第四十二話其の⑲御衣を賜わる【前編】(2/14)
第四十三話其の⑲御衣を賜わる【後編】(4/15) 第四十四話其の⑳禍きたる【前編】(4/20)
第四十五話其の⑳禍きたる【後編】(4/21) 第四十六話其の21 流れゆく身【前編】(4/23)
第四十七話其の21流れゆく身【後編】(4/25) 第四十八話其の22明石の驛【前編】(5/4)
第四十九話其の23明石の驛【後編】(5/10) 第五十話其の24筑紫への道(7/5)

ページトップ
ホーム  >  その⑱右大臣に昇る【前篇】